研究課題

2017年4月現在

2-001 冬の気候変動が針広混交林へ及ぼす影響の解明
2-002 ダケカンバの遺伝的多様性が森林の生態プロセスに与える影響の解明
2-003 温暖化がダケカンバ生態系に与える影響の解明
2-004 森林の物質循環機能に関する長期モニタリング研究
2-005 長期(>10年)温暖化操作が森林土壌の呼吸量に及ぼす影響
2-006 落葉広葉樹林の生態系機能に対する窒素散布影響の解明
2-007 大規模検証サイトによる人工衛星データの検証とアルゴリズム開発
2-008 冷温帯落葉広葉樹林におけるガスフラックスとフェノロジーの長期観測
2-009 野外操作実験による樹木の温暖化応答の解明
2-010 森林におけるシカの生態系機能
2-011 土壌が植生遷移に与える影響
2-012 種内のサイズ変異の生成機構とその生態学的帰結:池の食物連鎖に注目して
2-013 昆虫群集の生態と進化のフィードバックループ
2-014 病虫害防衛と遺伝的多様性を応用したミズナラの育林
2-015 積雪寒冷地域の森林における森林施業が渓流水のイオン動態に与える影響
2-016 窒素施肥流域における物質循環および水文プロセスの長期的変化
2-017 照査法試験林の保全、管理に関する研究
2-018 ナラ類産地試験の調査
2-019 ササ消失が樹木の生長と土壌窒素動態に及ぼす影響
2-020 天然林材の材色と生育立地との関係
2-021 冬の気候変動がミミズを介してカラマツ成木の成長へ及ぼす影響

2-001 冬の気候変動が針広混交林へ及ぼす影響の解明
課題責任者小林 真
実施期間2015/4/1~2017/3/31 実施期間終了
実施研究林中川研究林
概要世界各地の北方林では、冬から春期にかけての気温上昇にともない雪解け時期が早まっている。雪解け時期は多雪地帯において樹木の活動開始時期を規定する重要な要因の1つであり、その変化は樹木のもつ炭素固定機能や生物多様性維持機能へ大きな影響を及ぼすと考えられる。これまでの研究では、ツンドラや草本群集、もしくは稚樹など背の低い植物群集、もしくは植物個体を対象とした研究が多く、炭素固定や生物多様性維持を主な担い手である成木群集へ及ぼす影響については明らかにされていない。そこで本研究では、中川研究林内の針広混交林において、林分レベル(20m四方)で雪解け時期を操作する処理(春期に寒冷紗を雪面に設置する)を行い、処理区内の成木群集へ及ぼす影響とそのメカニズムを、特に地下部や下層植生との関係に注目しながら解明する。

2-002 ダケカンバの遺伝的多様性が森林の生態プロセスに与える影響の解明
課題責任者中村誠宏
実施期間:2015/4/1~2018/3/31
実施研究林北管理部
概要本研究の目的は、(1)北方林において優占種であるダケカンバ種内の遺伝的多様性が森林の生態的プロセス(生態系機能と昆虫群集構造)にどのような影響を与えるのか?をプロットレベルで解明すること、さらに(2)この樹木種内の遺伝的多様性により形づけられた生態的プロセスが今後起こりうる気候変動(地球温暖化)に対してどれだけ安定的に保たれるのか?解明することである。実際の森林生態系では隣接する他の樹木個体からの影響を受けて生態系プロセスは成立する。すなわち、空間スケールを拡大して複数個体を含めたプロットレベルの温暖化応答を解明することは、将来の気候変動の影響を正確に予測する上で必要不可欠である。

2-003 温暖化がダケカンバ生態系に与える影響の解明
課題責任者中村誠宏
実施期間:2015/4/1~2018/3/31
実施研究林中川研究林
概要温暖化操作実験が可能な野外実験施設(ジャングルジム)を整備し、地球温暖化がダケカンバ成木(高さ:20m程度)を中心とする生態現象に与える影響を解明する。世界中で温暖化実験が行われているが、草本や木本でも実生など小さなサイズの植物を暖めたものが多い。しかし、森林のバイオマスの大部分を占める成木が温暖化に対してどのように応答するのかを解明することは重要である。本研究では、ダケカンバ成木の地上部と地下部を林冠OTCと電熱ケーブルを使って、それぞれ人工的に温暖化を施し、その成木の生長、繁殖、フェノロジー、生理機能、植物形質、食害、土壌分解などを測定する。また、学生実習でもこの施設は活用する。

2-004 森林の物質循環機能に関する長期モニタリング研究
課題責任者高木健太郎
実施期間:2015/4/1~2018/3/31
実施研究林天塩研究林
概要伐採や育林に伴う森林の物質循環の変化を長期モニタリングするために、2001年より観測を行っている151林班ヤツメの沢小流域の総合環境モニタリングを継続し、関連する研究成果を発信することを目的とする。これまでの14年間、伐採が炭素・窒素循環に及ぼす影響や、広域の森林蓄積量の評価、東アジアの森林の二酸化炭素循環特性に関する研究成果を発信してきた。今後も植林カラマツの生長に伴う、森林の炭素吸収量の増加傾向を明らかにするために継続観測するとともに、関連する調査・観測も継続して行う。研究期間中に観測項目すべての成果発表は難しいが、成果発表研究の基盤情報の充実や将来の研究材料/シーズ提供を狙い、現在行っている観測項目すべてを本研究課題に移行する。期間中外部利用希望や労働力・財源の変更に伴い、観測項目の修正を適宜行う。

2-005 長期(>10年)温暖化操作が森林土壌の呼吸量に及ぼす影響
課題責任者高木健太郎
実施期間:2015/4/1~2018/3/31
実施研究林天塩研究林
概要2007年より庁舎裏の郷土樹種園で行っている土壌長期温暖化実験を継続し、長期的(>10年)な温暖化操作が森林の土壌呼吸量に及ぼす影響を明らかにする。土壌炭素や微生物量を計測することによって変化要因について考察する。

2-006 落葉広葉樹林の生態系機能に対する窒素散布影響の解明
課題責任者中路達郎
実施期間:2015/4/1~2017/3/31 実施期間終了
実施研究林苫小牧研究林
概要窒素降下量の増大等による栄養条件の変化が冷温帯落葉広葉樹林の成長や物質循環、生物間相互作用に与える影響を明らかにするために、苫小牧研究林の409・413林班に約9.3haの範囲に調査区を作成し、年間haあたり100kg(窒素ベース)の尿素を散布する。試験対照区は同林413・417・418林班とし、双方において毎木調査、土壌呼吸、林冠木の葉形質、食植生昆虫のモニタリングを行う。

2-007 大規模検証サイトによる人工衛星データの検証とアルゴリズム開発
課題責任者中路達郎
実施期間:2015/4/1~2018/3/31
実施研究林雨龍、苫小牧研究林
概要人工衛星によって森林の生態系機能の広域かつ高精度の広域評価を行うために、衛星データの空間分解能を考慮した大スケールの森林情報を整備する。苫小牧研究林(205林班~209林班)の落葉広葉樹林、および雨龍研究林(317林班)の常緑針葉樹林において500m×500mの大規模調査区を作成し、内部の地上部バイオマスや葉量の計測を実施する。さらに、苫小牧研究林のサイトでは、周囲1km以内(204林班)に位置する林冠クレーンにおいて分光データやフラックスデータ等の地上データの取得と解析を行う。2017年度にJAXAの環境観測衛星GCOM-Cが打ちあがることを想定して、両箇所のデータを用いた、光学情報から地上部生産を推定するためのアルゴリズムの開発・検証を行う。

2-008 冷温帯落葉広葉樹林におけるガスフラックスとフェノロジーの長期観測
課題責任者中路 達郎
実施期間:2015/4/1~2018/3/31
実施研究林苫小牧研究林
概要冷温帯落葉広葉樹林において炭素吸収能力の季節/経年変動を明らかにし、フェノロジーの影響を明らかにするため、苫小牧研究林409林班と204林班において観測タワーにフラックス観測機器および林冠カメラを設置し、ガスフラックスと林冠写真の連続観測を行う。

2-009 野外操作実験による樹木の温暖化応答の解明
課題責任者中路達郎
実施期間:2015/4/1~2017/3/31 実施期間終了
実施研究林:苫小牧研究林
概要気候変動下の樹木(成木)の応答を明らかにするため、コナラ属が優占する落葉広葉樹林において樹冠あるいは林床の根系を人為的に温暖化させ、その応答を長期間調査する。苫小牧研究林内に立地するミズナラとコナラを対象とし、それぞれ、地中の電熱線ケーブル、林冠部のビニール被覆によるオープントップチャンバーによって温暖化操作を行う。ミズナラの土壌温暖化実験では、土壌中の養分や根系動態、土壌呼吸ならびに林冠の葉形質と食植生昆虫の食害を調査し、リモートセンシングによる検出効果を検証する。林冠を温めるコナラの実験では、光合成機能やフェノロジー、繁殖生態における応答に着目する。

2-010 森林におけるシカの生態系機能
課題責任者日浦 勉
実施期間:2015/4/1~2018/3/31
実施研究林:苫小牧研究林
概要本課題では森林においてシカがはたす生態系機能を明らかにする。苫小牧研究林に設置してあるシカ高密度化区・シカ排除区・シカ自然密度区(対照区)、およびそれらの中に設定した伐採プロット・施肥プロットなどの操作実験系を維持する。この実験系内の植生およびその他の生物相の生息状況を調査する。また、研究林内の既設の6か所の調査区において、シカの採食圧を調査し、樹種によるシカの影響の違いを検討する。これらの一連の実験区・調査区では、シカに対する様々な生物分類群の応答についての研究が可能なので、これまで同様に他の分類群の研究者と共同利用・共同研究を進めてゆきたい。なお、本研究課題は基盤課題である「ニホンジカ個体群モニタリング」の結果を参考とする。

2-011 土壌が植生遷移に与える影響
課題責任者日浦 勉
実施期間:2015/4/1~2018/3/31
実施研究林:苫小牧研究林
概要土壌を剥ぎ取った区画、土壌を填圧し物理構造を改変した区画、対照区を複数設け、土壌が植生遷移や物質循環に与える影響を超長期にわたって実験的に明らかにする

2-012 種内のサイズ変異の生成機構とその生態学的帰結:池の食物連鎖に注目して
課題責任者岸田 治

実施期間:2015/4/1~2018/3/31
実施研究林:天塩研究林
概要同じ年(季節)に生まれた同種個体でもサイズが大きく異なることがある。集団内部のサイズ変異はどのように生まれどのような意味を持つのか? 本課題では、エゾアカガエルとエゾサンショウウオをモデルとし、サイズ変異の創出機構とその帰結を研究する。特に両者のサイズ変異が食う‐食われる関係に作用する条件とメカニズムを明らかにしつつ、その結果として2種および他種のデモグラフィや系内外の栄養移動にどんなインパクトがあるのかを探索する。

2-013 昆虫群集の生態と進化のフィードバックループ
課題責任者内海俊介

実施期間:2015/4/1~2018/3/31
実施研究林:雨龍研究林
概要本課題では、野外環境における生物群集の生態学的な動態と迅速な進化動態のフィードバックループを解明することを目指す。ヤナギ成木を防虫網で覆ったメソコズムを8基設置する。それらのメソコズムにおいて、昆虫群集とハムシ集団の遺伝構成を操作して放飼し、群集構造やハムシ集団の遺伝構成の時間変化を追跡することによって、群集の生態学的な動態と迅速な進化動態がどのように作用しあうのかを検証する。また、それに付随して、ハムシの遺伝構造を明らかにする遺伝学的実験や生物間相互作用を詳細に理解するための圃場実験を行う。

2-014 病虫害防衛と遺伝的様性を応用したミズナラの育林
課題責任者内海俊介

実施期間:2015/4/1~2018/3/31
実施研究林:雨龍研究林
概要植物の病虫害防衛に関わるシグナル物質の応用と遺伝的多様性の操作によって、有用広葉樹の効果的な育林方法を探索することを目的とする。地拵えを行った更新地において、複数の母樹から採取したミズナラ堅果を播種する。その際、堅果はジャスモン酸メチルやサリチル酸メチルといった植物の病虫害防衛に関わるシグナル物質による前処理を行い、また、各プロット内堅果の由来母樹数を変えて遺伝的多様性を操作する。それらの操作が、実生の成長、防衛物質の発現量、食害量、昆虫群集の形成に与える効果を明らかにする。

2-015 積雪寒冷地域の森林における森林施業が渓流水のイオン動態に与える影響
課題責任者佐藤冬樹

実施期間:2015/4/1~2018/3/31
実施研究林:雨龍研究林
概要我が国では木材生産の面で森林施業の研究が古くから行われてきたが、地域特有の森林施業が物質循環や渓流水質に与える影響を調査した研究例は未だ少ない。そこで本研究では、実際に北海道北部の森林施業に取り入れられている方法で操作実験(皆伐・掻き起し・表土戻し等)を行い、渓流水質の変化や土壌中の無機イオン動態を把握して、積雪寒冷地における森林流域の施業のあり方について検討することを目的としている。試験方法としては、複数の小流域を含む100ha規模の流域を設定し、各小流域には量水堰を設置して流量・水質変化を長期的にモニタリングする。

2-016 窒素施肥流域における物質循環および水文プロセスの長期的変化
課題責任者福澤加里部

実施期間:2015/4/1~2018/3/31
実施研究林:中川研究林
概要窒素沈着の増加が窒素をはじめとする物質循環と水文プロセスに及ぼす影響を明らかにするため、窒素施肥による窒素沈着量の操作実験を行い、河川水質および流量観測を行う。この窒素施肥実験は2001年から実施されており、短期的には付加された窒素は生態系内に保持されることが明らかになっているものの、中長期的な変化を追跡することも必要であることから、継続して窒素施肥と水質・水文観測を行う。また、14年間の継続的な窒素流入が土壌-植物-微生物系の窒素動態や生産性に及ぼす影響について、土壌や細根サンプリングなどにより明らかにする。施肥流域では、毎年融雪時期後期に人力で粒状の硝酸アンモニウムを50 kgN ha-1散布し、施肥を行わない対照流域との間で比較する。各流域の末端部において河川水を採水する。流量観測では量水堰での水位の自動観測と定期的な水位測定により、年間流出量を評価する。

2-017 照査法試験林の保全、管理に関する研究
課題責任者吉田俊也

実施期間:2015/4/1~2016/3/31 実施期間終了
実施研究林:中川研究林
概要持続的資源利用を目的とした、照査法に基づく毎木調査および収穫調査を行なう。試験林内では1960年台後半から調査が継続されており、現在は10年間隔での5回目の調査(第4経理期)となる。これまでのデータ(個体識別した胸高直径)を用いて林分の40年間の変化を記載するとともに、前試験課題で得た立木位置情報を用いて、林分・個体に及ぼす択伐の影響を明らかにする。なお、毎木調査に関しては2015年度が第4経理期の最終年にあたり、2016年度からは実施内容を精査したうえで基盤調査課題に移行する予定のため、本申請の期間は単年度のみとしている

2-018 ナラ類産地試験の調査
課題責任者門松昌彦

実施期間:2016/4/1~2019/3/31
実施研究林:雨龍研究林
概要1981年設定の3大学ミズナラ産地試験地で設定後35年目、1991年設定の日中ナラ類産地試験地で設定後25年目の生育状況調査を行い、産地や母樹による生育状況の違いを検討することを目的とする。従来の調査データと合わせて、取りまとめを行う。

2-019 ササ消失が樹木の生長と土壌窒素動態に及ぼす影響
課題責任者福澤加里部

実施期間:2016/4/1~2019/3/31
実施研究林:中川研究林、北管理部
概要森林におけるササの消失が樹木の生長と菌根の形成、窒素吸収を介して土壌の窒素動態および窒素フローに及ぼす影響を、野外フィールドでの大規模なササ除去実験により明らかにする。シカによるササの消失を想定し、地下部での樹木とササの水・養分をめぐる競争をササ除去により停止させ、そのときの土壌中の窒素動態と集水域からの窒素フローの変化を観測するとともに、残存した樹木の細根、窒素吸収能、菌根形成および微生物相の応答からササ除去後の窒素動態メカニズムを解明する。

2-020 天然林材の材色と生育立地との関係
課題責任者吉田俊也

実施期間:2016/4/1~2018/3/31
実施研究林:雨龍研究林
概要木材が家具や内装材として用いられる場合、その「色味」は重要な製品特性のひとつである。しかし、そのような色特性は(マカバ-メジロカンバを例外とすると)木材流通の過程では明示的に取り扱われることはむしろ稀で、関連する研究もほとんど行われていなかった。しかし、加工・利用者の一定のニーズが存在することを勘案すると、材色は、木材資源の高付加価値化・製品の差別化に寄与する可能性を持つ特性といえる。本申請課題では、主要樹種を対象に、直営生産で産出される材の木口面の色相および明度を計測し、そのばらつきの程度を示すとともに材質および生育立地との関係を明らかにする

2-021 冬の気候変動がミミズを介してカラマツ成木の成長へ及ぼす影響
課題責任者小林 真

実施期間:2015/4/1~2018/3/31
実施研究林:天塩研究林
概要世界各地の北方林では、冬から春期にかけての気温上昇にともない雪解け時期が早まっている。雪解け時期は多雪地帯において樹木の活動開始時期を規定する重要な要因の1つであり、その変化は樹木の成長へ影響を及ぼすと考えられる。これまでの研究では、雪解けの早まりが直接的に植物の成長へ及ぼす影響については研究されてきた一方で、土壌動物など関連する生物を介して及ぼす影響については研究例を見ない。そこで本研究では、天塩研究林内のカラマツ林において、2m×3m×8カ所を対象にミミズの個体数調査処理や雪解け時期を操作する処理(春期にヒーターなどにて実施)を行い、成木の成長や栄養塩利用に及ぼす影響について明らかにする