研究課題

2023年12月現在

現在進行中の課題

終了した課題

2-001 冬の気候変動が針広混交林へ及ぼす影響の解明
2-002 ダケカンバの遺伝的多様性が森林の生態プロセスに与える影響の解明
2-003 温暖化がダケカンバ生態系に与える影響の解明
2-006 落葉広葉樹林の生態系機能に対する窒素散布影響の解明
2-007 大規模検証サイトによる人工衛星データの検証とアルゴリズム開発
2-008 冷温帯落葉広葉樹林におけるガスフラックスとフェノロジーの長期観測
2-009 野外操作実験による樹木の温暖化応答の解明
2-010 森林におけるシカの生態系機能
2-011 土壌が植生遷移に与える影響
2-012 種内のサイズ変異の生成機構とその生態学的帰結:池の食物連鎖に注目して
2-013 昆虫群集の生態と進化のフィードバックループ
2-014 病虫害防衛と遺伝的多様性を応用したミズナラの育林
2-015 積雪寒冷地域の森林における森林施業が渓流水のイオン動態に与える影響
2-016 窒素施肥流域における物質循環および水文プロセスの長期的変化
2-018 ナラ類産地試験の調査
2-020 天然林材の材色と生育立地との関係
2-021 冬の気候変動がミミズを介してカラマツ成木の成長へ及ぼす影響

2-022 国内外来種アズマヒキガエルの影響評価

2-023 河畔林生態系を特徴づけるスペシャリスト-ジェネラリスト進化動態

2-024 北海道における広葉樹林再生技術の確立

2-028 ダケカンバの遺伝的多様性が森林の生態プロセスに与える影響の解明

現在進行中の課題

2-004 森林の物質循環機能に関する長期モニタリング研究
課題責任者高木 健太郎
実施期間:2015/4/1~2027/3/31(実施期間延長)
実施研究林天塩研究林
概要伐採や育林に伴う森林の物質循環の変化を明らかにするために、2001年より長期観測を行っている151林班ヤツメの沢小流域の総合環境モニタリングを継続し、関連する研究成果を発信することを目的とする。今後も植林カラマツの生長に伴う、森林の炭素吸収量の増加傾向を明らかにするとともに、関連する調査・観測も継続して行う。研究期間中に観測項目すべての成果発表は難しいが、成果発表研究の基盤情報の充実や将来の研究材料/シーズ提供を狙い、現在行っている観測項目すべてを継続する。期間中外部利用希望や労働力・研究費の変更に伴い、観測項目の修正を適宜行う。

2-005 長期温暖化操作が森林土壌の呼吸量に及ぼす影響とそのメカニズムの解明
課題責任者高木 健太郎
実施期間:2015/4/1~2027/3/31(実施期間延長)
実施研究林天塩研究林
概要2007年より庁舎裏の郷土樹種園で行っている土壌長期温暖化実験を継続し、長期的な温暖化操作が森林の土壌呼吸量に及ぼす影響を明らかにする。土壌中の放射性炭素や微生物量を計測することによって変化要因について考察する。

2-019 ササ消失が樹木の生長と土壌窒素動態に及ぼす影響
課題責任者福澤 加里部

実施期間:2016/4/1~2025/3/31(実施期間延長)
実施研究林:中川研究林、北管理部
概要森林におけるササの消失が樹木の生長と菌根の形成、窒素吸収を介して土壌の窒素動態および窒素フローに及ぼす影響を、野外フィールドでの大規模なササ除去実験により明らかにする。シカによるササの消失を想定し、地下部での樹木とササの水・養分をめぐる競争をササ除去により停止させ、そのときの土壌中の窒素動態と集水域からの窒素フローの変化を観測するとともに、残存した樹木の細根、窒素吸収能、菌根形成および微生物相の応答からササ除去後の窒素動態メカニズムを解明する。

2-024 北海道における広葉樹林再生技術の確立
課題責任者車 柱榮

実施期間:2019/4/1~2024/3/31
実施研究林:雨龍、札幌研究林
概要責任者はこれまで、北海道の森林に生息しているナラタケ菌類が多様な種として構成され、樹木を枯らしたり、倒木及び落枝・落葉などの林床木質を分解したりするなどいわゆる森の掃除屋であることを究明した。また、ハイマツの天然更新にはシャクジョウソウやキシメジとのネットワークが欠かせないことも明らかにして来た。しかし、このような森林を対象とした様々な研究結果の究極的な目的は、持続可能な森林資源生産のための施業技術の確立に活かされることではないだろうか?。北海道の森林は針葉樹と広葉樹の混生林が多くを占める。林床はササ類に覆われ実生や稚樹の生残が難しい。天然更新補助作業として大型機械によるかき起こしにより各地で森林造成が可能となった。針葉樹はこのようなかき起こし地に苗を植えることで造成の成果が挙がっている。広葉樹は主にカンバ類の二次林となることがわかった。しかし、他の広葉樹を育てる技術は確立しておらず、北海道森林の本来の姿である様々な樹種の混交する森林を造成する上で大きな課題として残っている。以上を鑑みて、本研究はまず、研究林の事業としてかき起こし地に植栽され2-30年経過し、カンバ類と交じり合って残存しているミズナラ、シナノキ、ハリギリ、ヤチダモの4種の広葉樹造林地を対象とし、現在に至った事業経過と成長過程や木質の物理特性、林況、林床などの関係を多面的に解析することとした。この結果を考察し、今後の広葉樹林育成・再生施業に生かすことで、最終的に北海道針広混交林の造成技術を確立させることができる。

2-025 窒素を付加した森林集水域における窒素動態メカニズムの解明
課題責任者福澤 加里部

実施期間:2019/4/1~2025/3/31(実施期間延長)
実施研究林:中川研究林、北管理部
概要:大気窒素沈着の増加に対する森林生態系の応答について、窒素保持・除去機能など窒素動態メカニズムを解明することをめざす。窒素施肥による窒素沈着量の操作実験を行い、河川水質および流量観測を行う。この窒素施肥実験は2001年から実施されており、中長期的な窒素流出の変化がみえてきた。さらに土壌における窒素除去など関連するプロセスを解明するために、継続して窒素施肥と水質・水文観測を行う。施肥流域では、毎年融雪時期後期に硝酸アンモニウムを50 kgN ha-1散布し、施肥を行わない対照流域との間で比較する。各流域の末端部において河川水を採水する。流量観測では量水堰での水位の自動観測と定期的な水位測定により、年間流出量を評価する。

2-026 温暖化が丸太の分解に及ぼす影響とそのメカニズムの実験的解明
課題責任者小林 真

実施期間:2018/5/28~2028/5/27
実施研究林:苫小牧研究林
概要:気温上昇が森林の炭素循環ー特にこれまでに知見が限られる丸太の分解に及ぼす影響について実験的に検証する。具体的には、苫小牧研究林にオープントップチャンバーを設置し、通常状態と、通常状態よりも温度が高い条件で丸太を10年間培養し、その重量減少や化学成分に及ぼす影響を、培養1年後、3年後、5年後、10年後に測定する。

2-027 PITタグを用いた個体追跡による河川性魚類の生態研究
課題責任者岸田 治

実施期間:2020/4/1~2026/3/31(実施期間延長)
実施研究林:苫小牧研究林
概要:動物は状況に合わせて「生息場所を変える」ことができる。 したがって、動物の生活史や機能の多様性を把握し、その創出と維持の機構を理解するには、「生活史の種間・種内の変異パターンを、個体の生息場所選択と関連付けて明らかにする」必要がある。 しかし、広域を移動する動物を、十分な個体数、長期にわたり追跡することは実に困難であり、このような着眼点で進められた研究は驚くほど少ない。 本研究では、幌内川にすむサケ科魚類を対象に、最新の個体追跡技術を駆使した大規模フィールドワークで、この課題にチャレンジする。 5。2㎞にもおよぶ流程で、できるだけ多くの魚(数千~1。5万)にPITタグ(電池不要の無線ICタグ)を挿入し個体識別する。 2つのタイプのPITタグ読み取りアンテナを使い、各個体の生息場所と移動を、年中、昼夜に関係なく調べつつ、春と秋には、全区間で魚を徹底的に再捕獲し、生活史(サイズ・形態・生存・繁殖など)の情報を得る。 集積した個体レベルの生活史と行動のデータを分析し、条件依存的に表れるであろう個体の生息場所選択と生活史の相互関係から「動物における行動と生活史の統合的戦略」を探索する。

2-029 森林施業が渓流水中のイオン・溶存有機物動態に与える影響
課題責任者福澤 加里部

実施期間:2022/4/1~2025/3/31
実施研究林:雨龍研究林、北管理部
概要:渓流水質は上流部で起こっている生物地球化学的プロセスを反映する。森林伐採等の森林施業による撹乱は窒素循環を改変し、渓流への窒素溶脱を引き起こし、下流生態系や飲料水質への影響が懸念されている。北海道北部地域では林床がササで覆われており、ササが稚樹の更新を阻害する。そのため樹木伐採後に重機によりササ根系を除去して森林の更新を促すササ搔き起こしや、ササ搔き起こし(ササ除去)後に養分が豊富な表土を敷き戻して稚樹の成長を促進することを目指した表土戻しなどの森林施業が行われている。しかし、これらの複数の異なる集水域スケールの森林施業が長期的に渓流水質へ及ぼす影響に関する知見は非常に限られている。また森林施業後の溶存有機炭素と溶存窒素動態との関係は不明である。そこで本課題では、森林施業による長期的な渓流水中のイオン濃度と溶存炭素濃度の時間変化への影響を明らかにすることを目的とする。また、河川流量、水位、水温をあわせて測定することにより、水質と流量との関係を検討する。そしてこれまでのデータも活用し、気候変動や窒素沈着量の変化など変動する環境下における長期的な森林施業の影響の解明を目指す。

2-031 ヤナギ種内の遺伝的多様性が洪水撹乱に対する食害抵抗性に与える影響(レジリエンス)の解明
課題責任者中村 誠宏

実施期間:2023/4/1~2026/3/31
実施研究林:和歌山研究林
概要:河畔に生育するヤナギは極端気象現象(豪雨)で増加した洪水から大きな物理的ダメージ(撹乱)を受けるようになると考えられる。この研究の目的は、ヤナギ種内の遺伝的多様性が洪水撹乱に対する食害抵抗性に与える影響(レジリアンス)を解明することでる。ヤナギの遺伝的多様性の高いプロットでは洪水撹乱に対する食害抵抗性の回復が高いと予測していいる。

2-032 長期観察林データと三次元リモートセンシングデータの融合による森林バイオマスマップの作成
課題責任者中路 達郎

実施期間:2023/4/1~2026/3/31
実施研究林:天塩、中川、雨龍、苫小牧、和歌山研究林
概要:森林バイオマスの広域把握には、人工衛星や航空機などのリモートセンシングによる分類・空間情報は有用であるが、解析手法の開発と精度保持には、地上部バイオマス(AGB)の実測値が必須である。本課題では、長期観察林の毎木調査データ(胸高直径・樹種・樹高)をもとに得られるAGBとドローン搭載レーザースキャナで観測した三次元情報を解析することで、AGBと樹冠高(DCHM)の関係をはじめとする森林バイオマスの広域・高精度マッピングに資する情報を得る。森林タイプや生育過程、立地条件をもとに対象地を選択し、その周囲で衛星解析が可能な広さ(約30ha)の三次元情報を取得する。和歌山および苫小牧ではドローンデータ、北部三林では衛星情報も活用した広域マッピングを目指す。各林担当者は、1)長期観察林データの整理、2)観察林のGIS情報と必要に応じた樹高等の計測,、3)ドローン観測時のオペレーションを支援する。本課題は、外部研究「三次元森林空間データと毎木調査データを備えたマルチスケールバイオマス検証サイトの構築」(JAXA-EORA3、2022-2024年、中路達郎・高木健太郎・中村誠宏、吉田俊也・柴田英昭ほか)と連携しており、解析成果や議論の内容を共有する。 

2-033 強度間伐が天然更新の誘導に与える影響
課題責任者中村誠宏

実施期間:2024/4/1~2028/3/31
実施研究林:和歌山研究林
概要:人の手が入りづらい造林地に強度の間伐を入れて、隣接する天然性林からの種子の供給による天然更新の誘導はかる。伐採強度の違いにより天然性林への誘導に最適な伐採強度を探る。基本的に3月の暖温帯林施業実習の中で実施する。4年間で全てのコドラートを一回りする。 

2-034 チシマザサ一斉開花・枯死後のササ群落および森林動態の長期的変化
課題責任者福澤加里部

実施期間:2024/4/1~2027/3/31
実施研究林:中川研究林
概要:ササ類は100年スケールで大面積一斉開花・枯死を繰り返すことが知られているが、森林動態に及ぼす影響についてはほとんど分かっていない。中川研究林では、1966年にチシマザサの大面積一斉開花・枯死が発生し、その後の31年間にわたりチシマザサの稈数、稈長と木本植物の成長が追跡され、樹木の稚樹が31年間でようやくササ群落の高さを越えることが明らかにされた。本研究は、さらにその後25年が経過した時点でのササ群落の変化、樹木の量や大きさ、成長を解析することにより、ササの一斉開花・枯死が森林動態に及ぼす長期的な影響について明らかにすることを目的とする。 

終了した課題

2-001 冬の気候変動が針広混交林へ及ぼす影響の解明
課題責任者小林 真
実施期間2015/4/1~2017/3/31 実施期間終了
実施研究林中川研究林
概要世界各地の北方林では、冬から春期にかけての気温上昇にともない雪解け時期が早まっている。雪解け時期は多雪地帯において樹木の活動開始時期を規定する重要な要因の1つであり、その変化は樹木のもつ炭素固定機能や生物多様性維持機能へ大きな影響を及ぼすと考えられる。これまでの研究では、ツンドラや草本群集、もしくは稚樹など背の低い植物群集、もしくは植物個体を対象とした研究が多く、炭素固定や生物多様性維持を主な担い手である成木群集へ及ぼす影響については明らかにされていない。そこで本研究では、中川研究林内の針広混交林において、林分レベル(20m四方)で雪解け時期を操作する処理(春期に寒冷紗を雪面に設置する)を行い、処理区内の成木群集へ及ぼす影響とそのメカニズムを、特に地下部や下層植生との関係に注目しながら解明する。

2-002 ダケカンバ遺伝的多様性の安定性機能に関する調査
課題責任者中村 誠宏
実施期間:2015/4/1~2021/3/31 実施期間終了
実施研究林北管理部
概要本研究の目的は、ダケカンバ種内の遺伝的多様性により形づけられた生態的プロセスが今後起こりうる気候変動に対してどれだけ安定的に保たれるのか?解明することである。実際の森林生態系では隣接する他の樹木個体からの影響を受けて生態系プロセスは成立する。すなわち、複数個体を含めたプロットレベルの環境変動に対する応答の調査を長期間継続することは、将来の気候変動の影響を正確に予測する上で必要不可欠である。

2-003 温暖化がダケカンバ生態系に与える影響の解明
課題責任者中村 誠宏
実施期間:2015/4/1~2021/3/31 実施期間終了
実施研究林中川研究林
概要温暖化操作実験が可能な野外実験施設(ジャングルジム)を整備し、地球温暖化がダケカンバ成木(高さ:20m程度)を中心とする生態現象に与える影響を解明する。世界中で温暖化実験が行われているが、草本や木本でも実生など小さなサイズの植物を暖めたものが多い。しかし、森林のバイオマスの大部分を占める成木が温暖化に対してどのように応答するのかを解明することは重要である。本研究では、ダケカンバ成木の地上部と地下部を林冠OTCと電熱ケーブルを使って、それぞれ人工的に温暖化を施し、その成木の生長、繁殖、フェノロジー、生理機能、植物形質、食害、土壌分解などを測定する。また、学生実習でもこの施設は活用する。

2-006 落葉広葉樹林の生態系機能に対する窒素散布影響の解明
課題責任者中路 達郎
実施期間:2015/4/1~2017/3/31 実施期間終了
実施研究林苫小牧研究林
概要窒素降下量の増大等による栄養条件の変化が冷温帯落葉広葉樹林の成長や物質循環、生物間相互作用に与える影響を明らかにするために、苫小牧研究林の409・413林班に約9.3haの範囲に調査区を作成し、年間haあたり100kg(窒素ベース)の尿素を散布する。試験対照区は同林413・417・418林班とし、双方において毎木調査、土壌呼吸、林冠木の葉形質、食植生昆虫のモニタリングを行う。

2-007 大規模検証サイトによる人工衛星データの検証とアルゴリズム開発
課題責任者中路 達郎
実施期間:2015/4/1~2018/3/31 実施期間終了
実施研究林雨龍、苫小牧研究林
概要人工衛星によって森林の生態系機能の広域かつ高精度の広域評価を行うために、衛星データの空間分解能を考慮した大スケールの森林情報を整備する。苫小牧研究林(205林班~209林班)の落葉広葉樹林、および雨龍研究林(317林班)の常緑針葉樹林において500m×500mの大規模調査区を作成し、内部の地上部バイオマスや葉量の計測を実施する。さらに、苫小牧研究林のサイトでは、周囲1km以内(204林班)に位置する林冠クレーンにおいて分光データやフラックスデータ等の地上データの取得と解析を行う。2017年度にJAXAの環境観測衛星GCOM-Cが打ちあがることを想定して、両箇所のデータを用いた、光学情報から地上部生産を推定するためのアルゴリズムの開発・検証を行う。

2-008 冷温帯落葉広葉樹林におけるガスフラックスとフェノロジーの長期観測
課題責任者中路 達郎
実施期間:2015/4/1~2018/3/31 実施期間終了
実施研究林苫小牧研究林
概要冷温帯落葉広葉樹林において炭素吸収能力の季節/経年変動を明らかにし、フェノロジーの影響を明らかにするため、苫小牧研究林409林班と204林班において観測タワーにフラックス観測機器および林冠カメラを設置し、ガスフラックスと林冠写真の連続観測を行う。

2-009 野外操作実験による樹木の温暖化応答の解明
課題責任者中路 達郎
実施期間:2015/4/1~2017/3/31 実施期間終了
実施研究林:苫小牧研究林
概要気候変動下の樹木(成木)の応答を明らかにするため、コナラ属が優占する落葉広葉樹林において樹冠あるいは林床の根系を人為的に温暖化させ、その応答を長期間調査する。苫小牧研究林内に立地するミズナラとコナラを対象とし、それぞれ、地中の電熱線ケーブル、林冠部のビニール被覆によるオープントップチャンバーによって温暖化操作を行う。ミズナラの土壌温暖化実験では、土壌中の養分や根系動態、土壌呼吸ならびに林冠の葉形質と食植生昆虫の食害を調査し、リモートセンシングによる検出効果を検証する。林冠を温めるコナラの実験では、光合成機能やフェノロジー、繁殖生態における応答に着目する。

2-010 森林におけるシカの生態系機能
課題責任者日浦 勉
実施期間:2015/4/1~2018/3/31 実施期間終了
実施研究林:苫小牧研究林
概要本課題では森林においてシカがはたす生態系機能を明らかにする。苫小牧研究林に設置してあるシカ高密度化区・シカ排除区・シカ自然密度区(対照区)、およびそれらの中に設定した伐採プロット・施肥プロットなどの操作実験系を維持する。この実験系内の植生およびその他の生物相の生息状況を調査する。また、研究林内の既設の6か所の調査区において、シカの採食圧を調査し、樹種によるシカの影響の違いを検討する。これらの一連の実験区・調査区では、シカに対する様々な生物分類群の応答についての研究が可能なので、これまで同様に他の分類群の研究者と共同利用・共同研究を進めてゆきたい。なお、本研究課題は基盤課題である「ニホンジカ個体群モニタリング」の結果を参考とする。

2-011 土壌が植生遷移に与える影響
課題責任者日浦 勉
実施期間:2015/4/1~2018/3/31 実施期間終了
実施研究林:苫小牧研究林
概要土壌を剥ぎ取った区画、土壌を填圧し物理構造を改変した区画、対照区を複数設け、土壌が植生遷移や物質循環に与える影響を超長期にわたって実験的に明らかにする

2-012 種内のサイズ変異の生成機構とその生態学的帰結:池の食物連鎖に注目して
課題責任者岸田 治

実施期間:2015/4/1~2018/3/31 実施期間終了
実施研究林:天塩研究林
概要同じ年(季節)に生まれた同種個体でもサイズが大きく異なることがある。集団内部のサイズ変異はどのように生まれどのような意味を持つのか? 本課題では、エゾアカガエルとエゾサンショウウオをモデルとし、サイズ変異の創出機構とその帰結を研究する。特に両者のサイズ変異が食う‐食われる関係に作用する条件とメカニズムを明らかにしつつ、その結果として2種および他種のデモグラフィや系内外の栄養移動にどんなインパクトがあるのかを探索する。

2-013 昆虫群集の生態と進化のフィードバックループ
課題責任者内海 俊介

実施期間:2015/4/1~2018/3/31 実施期間終了
実施研究林:雨龍研究林
概要本課題では、野外環境における生物群集の生態学的な動態と迅速な進化動態のフィードバックループを解明することを目指す。ヤナギ成木を防虫網で覆ったメソコズムを8基設置する。それらのメソコズムにおいて、昆虫群集とハムシ集団の遺伝構成を操作して放飼し、群集構造やハムシ集団の遺伝構成の時間変化を追跡することによって、群集の生態学的な動態と迅速な進化動態がどのように作用しあうのかを検証する。また、それに付随して、ハムシの遺伝構造を明らかにする遺伝学的実験や生物間相互作用を詳細に理解するための圃場実験を行う。

2-014 病虫害防衛と遺伝的様性を応用したミズナラの育林
課題責任者内海 俊介

実施期間:2015/4/1~2018/3/31 実施期間終了
実施研究林:雨龍研究林
概要植物の病虫害防衛に関わるシグナル物質の応用と遺伝的多様性の操作によって、有用広葉樹の効果的な育林方法を探索することを目的とする。地拵えを行った更新地において、複数の母樹から採取したミズナラ堅果を播種する。その際、堅果はジャスモン酸メチルやサリチル酸メチルといった植物の病虫害防衛に関わるシグナル物質による前処理を行い、また、各プロット内堅果の由来母樹数を変えて遺伝的多様性を操作する。それらの操作が、実生の成長、防衛物質の発現量、食害量、昆虫群集の形成に与える効果を明らかにする。

2-015 積雪寒冷地域の森林における森林施業が渓流水のイオン動態に与える影響
課題責任者佐藤 冬樹

実施期間:2015/4/1~2021/3/31 実施期間終了
実施研究林:雨龍研究林
概要我が国では木材生産の面で森林施業の研究が古くから行われてきたが、地域特有の森林施業が物質循環や渓流水質に与える影響を調査した研究例は未だ少ない。そこで本研究では、実際に北海道北部の森林施業に取り入れられている方法で操作実験(皆伐・掻き起し・表土戻し等)を行い、渓流水質の変化や土壌中の無機イオン動態を把握して、積雪寒冷地における森林流域の施業のあり方について検討することを目的としている。試験方法としては、複数の小流域を含む100ha規模の流域を設定し、各小流域には量水堰を設置して流量・水質変化を長期的にモニタリングする。

2-016 窒素施肥流域における物質循環および水文プロセスの長期的変化
課題責任者福澤 加里部

実施期間:2015/4/1~2018/3/31 実施期間終了
実施研究林:中川研究林
概要窒素沈着の増加が窒素をはじめとする物質循環と水文プロセスに及ぼす影響を明らかにするため、窒素施肥による窒素沈着量の操作実験を行い、河川水質および流量観測を行う。この窒素施肥実験は2001年から実施されており、短期的には付加された窒素は生態系内に保持されることが明らかになっているものの、中長期的な変化を追跡することも必要であることから、継続して窒素施肥と水質・水文観測を行う。また、14年間の継続的な窒素流入が土壌-植物-微生物系の窒素動態や生産性に及ぼす影響について、土壌や細根サンプリングなどにより明らかにする。施肥流域では、毎年融雪時期後期に人力で粒状の硝酸アンモニウムを50 kgN ha-1散布し、施肥を行わない対照流域との間で比較する。各流域の末端部において河川水を採水する。流量観測では量水堰での水位の自動観測と定期的な水位測定により、年間流出量を評価する。

2-018 ナラ類産地試験の調査
課題責任者門松 昌彦

実施期間:2016/4/1~2019/3/31 実施期間終了
実施研究林:雨龍研究林
概要1981年設定の3大学ミズナラ産地試験地で設定後35年目、1991年設定の日中ナラ類産地試験地で設定後25年目の生育状況調査を行い、産地や母樹による生育状況の違いを検討することを目的とする。従来の調査データと合わせて、取りまとめを行う。

2-020 天然林材の材色と生育立地との関係
課題責任者吉田 俊也

実施期間:2016/4/1~2018/3/31 実施期間終了
実施研究林:雨龍研究林
概要木材が家具や内装材として用いられる場合、その「色味」は重要な製品特性のひとつである。しかし、そのような色特性は(マカバ-メジロカンバを例外とすると)木材流通の過程では明示的に取り扱われることはむしろ稀で、関連する研究もほとんど行われていなかった。しかし、加工・利用者の一定のニーズが存在することを勘案すると、材色は、木材資源の高付加価値化・製品の差別化に寄与する可能性を持つ特性といえる。本申請課題では、主要樹種を対象に、直営生産で産出される材の木口面の色相および明度を計測し、そのばらつきの程度を示すとともに材質および生育立地との関係を明らかにする

2-021 冬の気候変動がミミズを介してカラマツ成木の成長へ及ぼす影響
課題責任者小林 真

実施期間:2015/4/1~2018/3/31 実施期間終了
実施研究林:天塩研究林
概要世界各地の北方林では、冬から春期にかけての気温上昇にともない雪解け時期が早まっている。雪解け時期は多雪地帯において樹木の活動開始時期を規定する重要な要因の1つであり、その変化は樹木の成長へ影響を及ぼすと考えられる。これまでの研究では、雪解けの早まりが直接的に植物の成長へ及ぼす影響については研究されてきた一方で、土壌動物など関連する生物を介して及ぼす影響については研究例を見ない。そこで本研究では、天塩研究林内のカラマツ林において、2m×3m×8カ所を対象にミミズの個体数調査処理や雪解け時期を操作する処理(春期にヒーターなどにて実施)を行い、成木の成長や栄養塩利用に及ぼす影響について明らかにする

2-022 国内外来種アズマヒキガエルの影響評価
課題責任者岸田 治

実施期間:2018/4/1~2021/3/31 実施期間終了
実施研究林:苫小牧研究林
概要北海道に本州原産のアズマヒキガエルが侵入したのは数十年前のことである。その後、同種は道内に定着し、特に道央を中心に分布を広げている。本研究ではアズマヒキガエルが在来生態系に与える影響を、野外調査と苫小牧研究林実験室での操作実験により推定する。

2-023 河畔林生態系を特徴づけるスペシャリスト-ジェネラリスト進化動態
課題責任者内海 俊介

実施期間:2018/4/1~2021/3/31 実施期間終了
実施研究林:雨龍研究林
概要北海道の河畔林ではヤナギ類とハンノキ類が卓越する。これらの樹種は際立った種特異的な特性を持つが、相互作用する昆虫や微生物の種内におけるスペシャリスト・ジェネラリストの振動的進化を駆動するという共通点を持つ可能性がある。これらの振動的進化のパターンの違いが河畔林生態系の時空間変異を特徴づけるという仮説を検証する。

2-028 ダケカンバの遺伝的多様性が森林の生態プロセスに与える影響の解明
課題責任者中村 誠宏

実施期間:2021/4/1~2023/3/31 実施期間終了
実施研究林:北管理部
概要:本研究の目的は、(1)北方林において優占種であるダケカンバ種内の遺伝的多様性が森林の生態的プロセス(生態系機能と昆虫群集構造)にどのような影響を与えるのか?をプロットレベルで解明すること、さらに(2)この樹木種内の遺伝的多様性により形づけられた生態的プロセスが今後起こりうる気候変動(地球温暖化)に対してどれだけ安定的に保たれるのか?解明することである。実際の森林生態系では隣接する他の樹木個体からの影響を受けて生態系プロセスは成立する。すなわち、空間スケールを拡大して複数個体を含めたプロットレベルの温暖化応答を解明することは、将来の気候変動の影響を正確に予測する上で必要不可欠である。