技術開発課題

2024年4月現在

現在進行中の課題

終了した課題

現在進行中の課題

3-010 シラカンバの生育環境等による樹皮への影響
課題責任者宮崎 徹
実施期間:2019/4/1~2024/3/31(実施期間延長)
実施研究林:雨龍研究林
概要シラカンバの木材価格は材質や木材の特性等からダケカンバ、マカバ材等と比べでも比較的安価で流通されている。しかし、シラカンバには他の樹種と比べても木材だけではない多様な利用の方法があり、中でもシラカンバの樹皮による木工作品などが注目され始めている。その反面、流通している樹皮は少量でも高額であったり、外国産のもので安定的に入手できなかったり、作家が自由に樹皮のみを入手する方法が少ないという課題もある。この現状から、間伐材や、木材生産の材から樹皮のみを採取し、販売することが可能になれば現状の課題の解決への可能性と木材生産のみではない新たな価値の創出ができるのではないかと考えた。その前段階として、どのような密度条件で、どのような生育環境から歩止の良い樹皮が取れるのか調査を行い、検証する。

3-012 積雪期におけるUAVを用いた胸高直径検出方法の開発
課題責任者間宮 渉
実施期間:2022/4/1~2025/3/31
実施研究林:中川、雨龍研究林
概要近年UAVを用いたリモートセンシング技術が発展し、林分単位でのより詳細な動態を推定することが可能となった。林分動態を把握する上で重要なのが樹木バイオマスの推定であるが、その推定には正確な胸高直径や樹高の計測が欠かせない。UAVリモートセンシングにより、樹冠高(Digital Canopy Height Model : DCHM)から既存の推定式を用いて樹木バイオマスを推定することは可能となったが、正確な推定にはその林分毎の毎木調査による標準地調査が必要となるうえ、単木単位で見るとその推定精度は高いとは言えない。

そこで本研究では上空から根元部分が撮影可能な積雪期(落葉期)における落葉広葉樹林、および針広混交林でUAVを用いたSfM(Structure from Motion)技術による、単木単位での高精度な胸高直径推定方法を開発することで、地上調査作業を大幅に軽減する技術を確立することを目的とする。

3-013 表土戻し量コントロール試験
課題責任者坂井 励
実施期間:2023/6/12~2029/10/31
実施研究林:雨龍研究林
概要これまでの研究により、表土戻しかき起こしによって成立するカンバ林の成長の速さが確かめられてきた。今後はいかに低コストで密度管理を行っていくかが課題となっている。その一つの方法として、表土戻しを行うエリアと行わないエリア(ササをそのままにする)を筋状に交互に配置する筋状表土戻しかき起こしを試みてきた。この手法の採用により、施工区林縁に更新した個体の成長空間を確保することが可能となった。 この筋状表土戻しかき起こし施工の更なる改良を提案する。従来ササのまま更新作業を行わなかったエリアで通常かき起こしを行い、その表土を表土戻しエリアにさらに加える。すると表土戻しエリアの表土の量は2倍になる。この2倍表土戻しエリアと通常かき起こしのエリアを筋状に交互に配置する。この施工方法により成立するカンバ林に階層構造を創出するとともに、2倍表土戻し区に成立したカンバ林のより高い成長を促すことができる可能性がある。そこで本試験では、通常のかき起こし、通常の表土戻し、戻す表土量を2倍にした表土戻しの3種の処理を実行し、戻す表土の量の違いによる天然更新の成績を定量的に明らかにし、事業化の可能性について検討する。

終了した課題

3-001 希少種テシオコザクラ・オゼソウの分布調査~保護管理技術の確立に向けて~
課題責任者伊藤 欣也
実施期間2015/4/1~2018/3/31 実施期間終了
実施研究林天塩研究林
概要北海道北部の蛇紋岩地帯には固有性が高く希少な植物種が多いが、なかでも渓流域の崩壊地に生えるテシオコザクラとオゼソウはその代表種として知られる。しかし現在のところこの2種について解明されている生態情報は「形態」や「繁殖様式」に関する専門性の高い学術研究に限られ、「分布」や「生息環境」の詳細はほとんどわかっていない。そこで本課題では、おもに天塩研究林の蛇紋岩地帯においてオゼソウ・テシオコザクラの自生地を特定し、それらの分布パターンについても理解を深め、将来の管理手法の確立のための基礎的知見を得る。


3-002 刈り払い機掻き起こしとササ地下茎切断効果の解明
課題責任者坂井 励
実施期間:2014/6/23~2017/10/31 実施期間終了
実施研究林雨龍研究林
概要天然更新を用いて低コストで森林を造成する手法として、阻害要因であるササ類を重機で剥ぎ取る「掻き起こし」の有効性が確かめられてきた。しかしながら重機走行が困難な急傾斜地、土壌保全が求められる水源地など、重機の使用が制限される環境での天然更新技術は未だ確立されていない。そこで本課題では刈り払い機を用いてA0層を攪乱し天然更新を促す「刈り払い機掻き起こし」の実行を試みる。さらに施工地周囲に広がるササラメットから施工面への栄養供給を遮断し、施工面のササ地上部の回復を抑制させることを目的として、掻き起こし施工面を取り囲むようにササ地下茎をルートカッターで切断する作業を取り入れる。ササ地下茎切断強度を変えた処理区を設定し、それぞれのササ回復速度と天然更新を調査することで、ササの地下茎切断処理が天然更新稚樹とササの競合をどの程度緩和するのかを定量的に評価する。また、刈り払い機掻き起こし作業及び地下茎切断作業に要するコストを計測することにより、事業化の可能性について検討する。

3-003 積雪期における樹冠下掻き起こし(根掘り掻き起こし)の試みと効果の解明
課題責任者坂井 励
実施期間:2015/1/20~2021/10/31 実施期間終了
実施研究林雨龍研究林
概要林冠開放度の低い場所での掻き起こしの実行は多様な樹種の更新を促すことから、択伐と樹冠下掻き起こしの組み合わせは、天然林の構造の維持と資源利用を両立させる手法の一つとして期待される。しかしその実行には課題がある。積雪期は雪を用いて重機の走行経路を安価に作設することができるが、掻き起こしを行う無積雪期に重機が林内隅々に散らばる施工地(択伐跡地)にアプローチすることは技術的、コスト的に困難であるとともに、必要以上の攪乱を森林に与えることになる。一方、積雪期に立木を伐採する際、より低い位置で伐採する(材の生産効率を高める)ためにバックホウ等の重機を用いて立木の周囲を除雪する「根掘り」という作業が一般的に行われる。この根掘り作業の際に、積雪下林床の掻き起こしを同時に行うことができれば、伐採作業と同時に更新作業を完了することができ、上述の課題を解決できる可能性がある。 そこで、本課題ではこの「根掘り掻き起こし」を天然林内において実行し、作業コストの計測と天然更新を調査する。その結果を無施工区及び無積雪期掻き起こし処理区と比較することにより、根掘り掻き起こしの効果を定量的に評価し、事業化の可能性について検討する。

3-004 希少猛禽類繁殖モニタリング
課題責任者奥田 篤志

実施期間:2015/4/1~2021/3/31 実施期間終了
実施研究林中川研究林、北管理部
概要中川研究林では、1997年からオジロワシをはじめとする希少猛禽類の繁殖状況のモニタリングを継続しており、中川研究林を特徴づける課題の一つになっている。調査は中川研究林内の5箇所あるオジロワシの営巣地の繁殖状況の長期モニタリングである。また、繁殖に成功した巣において巣立ち後巣内の餌残滓の回収をおこない、餌内容を調べる。この課題は、希少生物の保全のみならず、ロープアクセス技術の習得や応用など他の調査に応用出る技術の開発や継承も目的とする。

3-005 北方林の掻き起し・表土戻し施業において表土の堆積期間の違いが植生回復に及ぼす影響
課題責任者間宮 渉
実施期間:2016/4/1~2019/3/31 実施期間終了
実施研究林雨龍研究林
概要樹木の天然更新を期待する天然林施業は、植栽や間伐などを行う人工林施業に比べて労力やコストを低く抑えることができる。しかし、目的樹種の確実な天然更新をコントロールすることは一般に難しく、持続可能な森林管理・経営を実現するうえでの大きな課題となっている。本課題では北海道の天然林施業で高い更新効果が期待できる「掻き起し施業」について、表土を堆積する期間の違いに応じた樹木および草本の更新動態を解明することで、より効果的な施業方法を提案する。

3-006 苗木生産技術の改良と体系化
課題責任者奥田 篤志
実施期間:2017/4/1~2020/3/31 実施期間終了
実施研究林北管理部
概要造林面積の縮小に伴い育種試験地で生産する造林用苗木の数量は減少しているが、苗木の生産は従来のままである。施設の老朽化と維持管理コストを考慮し、苗木生産方法の改良を検討する。また、多様な樹種の苗木育成方および造林法についてこれまで各林で実施してきた広葉樹造林の方法(ヤチダモを中心に)等を集約して、苗木生産のマニュアルを作成する

3-007 中川研究林の周辺地域におけるヒグマリスクの把握とハザードマップの作成
課題責任者浪花 彰彦
実施期間:2018/4/1~2021/3/31 実施期間終了
実施研究林:中川研究林
概要中川研究林内に生息するヒグマと周辺住民との軋轢を回避するために役立つ基礎データの蓄積を目指して、研究林から隣接する民有地へのヒグマ出没リスクの調査を行う。本課題ではヒグマリスクを以下の3段階で評価する。 
1)潜在的ヒグマリスク:潜在的ヒグマリスクは、人間の土地利用に左右される。ヒグマが好む農作物の栽培地のリスクは高く、特に侵入防止策が十分でない場合や廃棄農作物がある場合などはリスクが高まる。研究林に隣接する民有地について、地図情報や現地調査から、潜在的なヒグマリスクの程度を評価する。
2)顕在化したリスク:顕在化したリスクとは、ヒグマの目撃や農作物への食害などである。周辺町村への聞き取りから、その発生状況を把握する。
3)顕在化しつつあるリスク:潜在的リスクが顕在化する前には、ヒグマの痕跡の増加等が起きる。上記調査の結果に基づき、潜在的ヒグマリスクが高いエリアの林縁部に調査ルートを設定し、ヒグマの痕跡等に関する現地調査を行う。
 以上の調査結果から、研究林周辺でのヒグマリスクの種類と程度を分類し、GIS上でハザードマップを作成する。そして誘引要素や誘引防止策とヒグマリスクの関係を考察する。

3-008 アカエゾマツ5年生苗の効率的活用
課題責任者伊藤 悠也
実施期間:2019/4/1~2024/3/31(実施期間延長)実施期間終了
実施研究林:中川研究林、北管理部
概要名寄林木育種試験地における苗木生産は基本計画をもとに生産本数が定められておりアカエゾマツであれば3,000本を目標に生産されている。通常、山出しされる苗木は7年生苗であるが、播種から5年目の2回目床替えで生産本数が調整され、やむを得ず廃棄されてしまう優良苗が存在する。廃棄されてしまう5年生優良苗も小苗ではあるが、十分利用する価値があると考える。

一方、造林において、中川研究林ではササを除去するため機械地拵えを行っているが、土壌が薄く粘土質の立地で植栽が行われることが多い。粘土は乾燥すると固化するため、根張りの大きい大苗だと植え穴を大きくする必要があり作業に難儀する。そのような立地では、むしろ、根張りの小さい小苗のほうが、植え穴が小さくなり作業効率が向上するとともに、確実に根付かせる点で定着にも有利である可能性がある。

本課題は、2回目床替えで廃棄される5年生優良苗の本数を見積もるとともに、造林地において5年生苗(小苗)と通常山出しする7年生苗(大苗)の成長を比較検証する。

調査については、1)廃棄苗状況調査、2)成長調査を行い検証。

3-009 表土戻し植栽造林の試み
課題責任者坂井 励
実施期間:2019/6/1~2022/10/31 実施期間終了
実施研究林:雨龍研究林
概要掻き起こしの際、剥いだササと表層土壌を一定期間堆積し、再び施工地に敷き戻す「表土戻し」施工は通常の掻き起こし施工に比べ、圧倒的な植生の回復を示す。これまで天然更新地で多く実行され、その効果が確かめられてきた。この効果は植栽人工造林でも期待される。

苗木を植栽する際は、クワで土壌に穴を掘り、植えたあと周辺の土を被せて土壌を締め固める。しかし、表土を敷き戻したばかりの施工地は、未分解の有機物(ササの桿や地下茎)に覆われているため、クワで穴を掘ることができない。また空隙が多いことから、苗木植栽後の土壌の締め固めをすることができない。これらの理由からこれまで表土戻し施工地での植栽は行われてこなかった。

敷き戻された有機物は時間とともに分解される。表土戻し施工1年後の施工地において植栽を試行してみたところ、有機物の分解が進み、植栽が可能であることがわかった。

本研究では表土戻し施工地(施工1年後)に苗木(トドマツ、アカエゾマツ、カラマツ)を植栽し、作業コストの計測とその成長を調査する。その結果を通常の掻き起こし施工地の植栽の結果と比較することにより、表土戻し植栽造林の効果を定量的に評価する。

3-011 レーキ筋状地拵え後の植栽位置が樹木の成長に及ぼす影響
課題責任者間宮 渉
実施期間:2019/4/1~2022/3/31 実施期間終了
実施研究林:雨龍研究林
概要雨龍研究林では植栽地地拵えにブルドーザーのレーキによる機械地拵えを採用している。そのためレーキのツメ部分が谷筋、その両脇が山筋の微地形となる。経験的に谷筋に植えるのが良いとされているが、定量化された事例はない。そこで本課題では「植栽木をどのような環境条件に植栽するのが良いのか」を現地調査と、ドローンを用いた地形解析を組み合わせて解明し、より効果的な植栽方法を提案する。